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介護保険制度の要介護認定者における障害者控除及び医療費控除の適用について- 新着情報
- 介護保険制度の要介護認定者における障害者控除及び医療費控除の適用について
2019/10/23
介護保険制度の要介護認定者における障害者控除及び医療費控除の適用について
Q 同居している70歳になる私の父が認知症となり、介護保険制度の要介護3と認定されました。
そこで私の所得税申告において、次の場合どのような取扱いになるのでしょうか。
(1) 要介護3の認定で障害者控除の対象となるのでしょうか。
(2) 介護保険の居宅サービスに係る費用は医療費控除の対象となるのでしょうか。
(3) 認知症が進行し、特別養護老人ホームに住民票を移して居住した場合も医療費控除が
受けられるでしょうか
A
(1) 介護保険法の要介護認定だけでは、障害者控除の対象とはなりません。
(2) 介護保険の居宅サービスに係る全ての費用が医療費控除の対象になるとは限りません。
医療費控除の適用対象となる金額は居宅サービス事業者が発行する領収書に記載され
ます。
(3) 特別養護老人ホームに住民票を移し居住されたとしても、生計が一であれば医療費控除の
適用は受けられます。
「解説」
1.介護保険制度の要介護認定と障害者控除の対応関係について
所得税法上、障害者控除の対象となる障害者は
① 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
② 児童相談所、精神保健指定医等の判断により知的障害者と判定された者
③ 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
④ 身体障害者手帳に、身体上の障害がある者として記載されている者
⑤ 引き続き6か月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要する
者などと規定されています。
ところで、介護保険制度の要介護認定者のうち、精神又は身体に 障害のある65歳以上の者で、
障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずるものとして 市町村長や福祉事務所長に
障害者として認定を受けた場合には、障害者控除の対象になります。
したがってご相談の場合、お父さんが要介護3の認定を受けているだけでは、障害者控除の適用はできません。
別途に市町村長や福祉事務所長に障害者として認定を受けた場合には障害者控除の対象になり、
さらに障害の程度が重度と判定される場合には、特別障害者に該当することとされています。
該当する場合、同居特別障害者に係る障害者控除75万円を受けることが出来ます。
また同居老親の場合、割増扶養控除58万円がプラスされ合計133万円の控除を受けることが出来ます。
2.医療費控除の適用について
(1)医療費の範囲
介護保険制度における居宅サービスについては訪問介護、デイサービス、ショートステイ等、
居宅サービスの医療費控除の対象が決められています。
そこで居宅サービス事業者が発行する領収書には医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。
したがってご相談の場合、医療費控除の対象金額の記載があればその記載された金額が医療費控除の対象となります。
一方特別養護老人ホームに係る医療費控除の対象については、施設サービスの対価として支払った額の2分の1相当額、
介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設は施設サービスの対価として支払った金額が医療費控除の対象となります。
ただし、個室等の特別室の使用料は、診療又は治療を受けるためにやむを得ず支払うものに限って医療費控除の対象となります。
(2)控除額の計算
高額介護サービス費として払い戻しを受けた場合には、その高額介護サービス費を医療
費の金額から差し引いて医療費控除の金額の計算をすることになります。
3.“生計を一にする”の意義
医療費控除の適用要件には、自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のた
めに支払った医療費であることと規定されています。
生計を一にするとは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではなく、
療養等の都合上、他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、
親族間において常に生活費・療養等の送金が行われている場合には、これらの親族は生計を一にするものとされています。
ご相談の場合、特別養護老人ホームに住民票を移されたとのことですが、療養の都合上別居している場合であっても、
これまでと同様にお父さんの生活費や療養費を支払われている場合には、生計を一にしているものとして取り扱われ、
医療費控除の適用が受けられます。
4. 障害者控除や医療費控除は、高齢化社会の中で生きる私たちにとって、今後ますます重要になってきます。
詳細は、是非ご相談ください。